ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2008/5/7/ja-can-dance/

Japanese (American) Can Dance!

このごろ、月曜日が来るのが待ち遠しくてたまらない。「Dancing with the Stars」(以下DWTS)の放送が楽しみなのだ。「DWTS」は、全米5大ネットワークの一つ、ABCの人気番組。12人の芸能人(スポーツ選手含 む)が、プロの社交ダンサーとペアを組み、勝ち抜き戦を行うというもの。社交ダンスなんてハイスクールのプロム以来、という芸能人たちがプロの厳しい指導 の下、懸命に踊る姿が視聴者の好感を呼んでいる。

第6シーズンを迎える現在、トップ街道を突き進んでいるのは、クリスティ・ヤマグチ。アルベールビル五輪の女子フィギュアスケート金メダリストであ る。“氷上でダンスを踊っていたフィギュアスケーターなのだから踊れて当然!”との声も上がっているが、クリスティは、中でもずば抜けたダンサーのよう だ。初回からボールルームダンスの上級編・フォックストロットで審査員から喝采を浴び、翌週のラテンダンスのマンボでは、「君たちが番組のレベルを上げて くれた」と絶賛された。このまま5月下旬の決勝まで勝ち進みそうな勢いである。

番組のおかげで、このごろLAのイベントあちこちから声が掛かっているクリスティ。4月23日、UCLAで行われた「Asian Excellence Award」では、特別賞の「インスピレーション・アウォード」を授賞した。同じく日系の女優タムリン・トミタから「(戦時中)強制収容所に収容された日 系人の血を引く、1人の日系人の少女がオリンピックで金メダルという夢を叶えました。彼女は夢を見続けることの大切さを教えてくれたのです」と紹介され、 ステージに姿を表したクリスティは、会場のアジア系セレブリティからスタンディングオベーション。氷上よりもダンスフロアよりも、ずっと緊張しているよう に見えたクリスティは、夫や母親ら家族が見守る中、「両親は私に、夢は大きく持つこと、そしてそれを信じて努力することを教えてくれました。今は、アジア 系アメリカ人の有望フィギュアスケーターがたくさんいます。私が、彼女たちのインスピレーションになれるとすれば嬉しいことです」と感激のスピーチを行っ た。

「DWTS」でもエピソードが紹介されていたが、クリスティは内反足というハンディキャップを持って生まれた。矯正の過程でリハビリになればと両親 が始めさせたのが、フィギュアスケートとの出合いだという。「DWTS」でも彼女がいかに才能あふれるダンサー/アスリートであるかを証明しているが、同 時にそうしたハンデも克服する精神力と努力こそが、彼女の金メダリストであるゆえんのようだ。プロの社交ダンサーで、パートナーを組むマーク・バラスも 「練習に入ると、彼女は休ませてくれないんだ」と、オリンピック式のトレーニングに脱帽している。

ちなみに「DWTS」の審査員、キャリー・アン・イナバは、ハワイ出身の日系人(中国とアイルランドの血も引く)。マドンナのコンサートツアーのダ ンサーであり、「アメリカン・アイドル」の振付を担当していたことでも有名だ。彼女が「DWTS」で日系人のダンス能力の高さに驚いたのは、実はクリス ティが初めてではない。第4シーズンの優勝者は、アポロ・アントン・オーノ(トリノ五輪スピードスケートショートトラックの金メダリスト)。父親は日本 人、アポロは日系2世である。

3人も日系人が出演する「DWTS」。日本の踊りは日本舞踊か盆踊り、「ダンスなんてできるのかい?」と疑うことなかれ、Japanese(American) Can Dance!!

© 2008 Yumiko Hashimoto

執筆者について

兵庫県神戸市生まれ、97年よりロサンゼルス在住。日系コミュニティ紙に編集者としての勤務していたが、近年はフリーランスライターとしてローカル情報を 中心に記事を執筆。日本にいたころは、第二次世界大戦時の強制収容所はおろか、“日系人”という言葉さえ、耳にすることもなかった。「日系人の存在を少し でも身近に考えてもらえれば」。その思いで「ディスカバー・ニッケイ」のサイトに寄稿している。

(2008年10月 更新)

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