ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2008/2/29/uchinanchu-taikai/

「世界のウチナーンチュ大会」と沖縄県系人ネットワーク

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ウチナーンチュ(沖縄の人々)を知るためのキーワードの一つは「移民」である。近代史の中で海外/県外への移民は沖縄にとって重要な意味を持ち、 20世紀前半においては一つの社会現象であった。1900年に、26人の沖縄人がハワイのオアフ島に上陸して以後、南北アメリカ大陸や南洋諸島、フィリピ ンなどへと多くのウチナーンチュが海を渡り、沖縄県は、全国でも有数の移民県として知られた。その結果、下表のように現在では海外に多数の県系人が存在す ることとなり、ハワイやロサンゼルスに見られるようなウチナーンチュ・コミュニティを形成して、そのアイデンティティを維持しつつ様々な活動を展開してき た。沖縄系の人々は、それぞれの移住地にしっかりと根を下ろし、その子孫には政治・経済や文化・学術など様々な分野で、それぞれの地域社会で活躍する人材 も現れるようになった

20世紀の後半には、沖縄から海外に移住する人は急激に減少するが、沖縄系コミュニティは存在感を失うことなく、人々は強い連帯感を持ち続け、その 文化や価値観の世代間での継承も比較的スムーズに行われてきた。そして、移民開始からほぼ一世紀が経過した今日、沖縄系の人々は世界に散在するコミュニ ティ間のネットワークを構築し始め、ウチナーンチュのグローバルなアイデンティティを模索しつつある。1990年から5年毎に開催されてきた「世界のウチ ナーンチュ大会」は、そうした一連の活動の中核をなすものである。同大会は沖縄県のリーダーシップの下に開催されたが、移民一世の故郷への想いと二世・三 世などのルーツ探しを熱望する声、そして沖縄県民の移民県としての誇りを再確認したいという願いが交差する形で実現されたのである。世界に居住するウチ ナーンチュたちがルーツの地で一堂に会するという壮大な企ては、その後、第2回(1995年)、第3回(2001年)、第4回(2006年)と開催を果た し、ウチナーンチュの越境的な連帯(ネットワーク)を強化しつつ、下図に見られるようにその参加者も増加し続けている。

世界のウチナーンチュ大会」では、前夜祭パレードに始まって閉会式まで、沖縄の伝統芸能や空手、県系人ネットワークに関するシンポジウム、パネル展 示会など様々な行事やイベントが実施された。こうした実行委員会主導の行事以外にも、親族間の集まりや芸能流派ごとの発表会・研究会、あるいは各市町村の 歓迎交流行事など、実に多彩な催しが繰り広げられる。

琉球大学の教員で構成する研究チームは、2006年10月に「第4回世界のウチナーンチュ大会」が開催された機会に、世界各地から参集した約 5,000名のウチナーンチュに対する「アンケート調査」を実施した。東シナ海の南に浮かぶ小さな島にルーツを持つ多国籍の人々が、「ウチナーンチュ」と いう旗の下に、大海を越えて、これほどの規模で参集し交流するというイベントは、他に類を見ないユニークなものであり、定量的調査の意義があると判断した のである。設問の内容は、4回目となるウチナーンチュ大会への評価や県系人の越境的なネットワーク活動などに関するものが中心であるが、4言語(日本語・ 英語・スペイン語・ポルトガル語)による調査票約5,500部を配布し、最終的に794票が回収された。

このたび、アンケート調査の集計作業が完了したことを受け、同プロジェクトに直接関わった琉球大学の研究チームと全米日系人博物館が共催し、 UCLAおよび北米沖縄県人会が協力する形でワークショップを開催する運びとなりました。調査で得られたデータをウチナーンチュの皆さんにご報告するとと もに、「ウチナーンチュ大会」と県系人のグローバルなネットワーク活動の持つ意義や、ウチナーンチュのアイデンティティについて意見交換ができればと思い ます。

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-- ディスカバー・ニッケイ主催イベントについて --

コミュニティーフォーラム:沖縄人とグローバルネットワークの追求
2008年3月1日(土)
2:00 pm - 4:00 pm

海外の世界ウチナンチュウ大会で行ったアンケート調査の発表を行います。

場所 : 全米日系人博物館
入場料: 大人8ドル、シニア5ドル、博物館メンバー無料
RSVP: (213) 625-0414 ext.2227 (英語) または rsvp@janm.org

* プログラム終了後引き続きレセプションが行われます。
* 沖縄の伝統芸能のパフォーマンスが披露されます。

詳細はこちらをクリック (英語)

協力: 琉球大学移民研究センター;Lane R. Hirabayashi, George & Sakaye Aratani Endowed Chair, Asian American Studies Department, UCLA;北米沖縄県人会

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© 2008 Hiroyuki Kinjo

沖縄県系 ウチナーンチュ
執筆者について

沖縄県生まれ。琉球大学。フィリピン大学大学院を終了。国際言語文化センター代表取締役、国際リゾート専門学校校長など を経て、現在琉球大学法文学部准教授。専門分野はスペイン文化論、言語研究、言語社会学。最近はウチナーンチュウのアイデンティティとネットワークに関心 を持つ。

(2008年2月 更新)

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