「ライフヒストリーのインタビューの方法」では、ライフヒストリーを初めて行う人のために、オーディオ機器あるいはオーディオビジュアル機器を使用したインタビューの基礎について紹介しています。音声インタビューのみに関心のある人は、ビデオ録画に関連した項目 (*) をとばして下さい。ライフヒストリーは、オーディオ用アナログ磁気テープ(カセット・オープンリール)、デジタルオーディオ( DAT ・ CD レコーダー)、フィルム(16 mm ・35 mm )、ビデオテープ、デジタルビデオなどにより収録されます。
6 つの原則:
調査 |
信頼関係 |
記録 |
抑制 |
撤収 |
再確認
調査
- 実際のインタビューに先立って、インタビューの対象者、すなわち語り手の人生についてよく知っている人から話を聞いておくこと。
- 図書館やインターネットを使って、語り手が歴史的にどのような役割を担っているのか調べ、それに関する重要な情報を手に入れておくこと。
- インタビューで追求したいトピックについて十分に理解しておくこと。
- * インタビューを行う場所を事前に視察し、オーディオ・ビデオ機器を使うための特別な機材が必要であるか確認すること。例えば、風の吹きつける屋外であればマイクロホンを保護するための防風スクリーン、暗い室内であれば予備の照明機器の準備が必要になります。
- * インタビュアーと撮影担当者はビデオインタビューの「形式」や映像の「見た目」について事前に打ち合わせしておくこと。
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信頼関係
- インタビューの時間には決して遅れないこと。
- インタビューの環境(セッティング)はできるだけ快適に保つこと。
- オーディオ・ビデオ機器を設置する間、インタビュアーはインタビュー対象者にその目的を説明したり、録画のプロセスやオーディオ・ビデオインタビューで慣例となっていることなどを話題にして、語り手の緊張をほぐすよう心がけること。
- インタビューは当たり障りのない質問から始めること。
- 途中で質問を思いついたとしても、語り手の良い話を中断しないこと。
- 語り手の話しが正確さに欠けると思っても内容を否定せず、その話しをより詳しく・明確に話してくれるよう丁寧に頼むこと。
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記録
- インタビューは常に語り手の名前、インタビュアーの名前、インタビューの場所、日時、オーラルヒストリーのプロジェクト名など、インタビューの紹介から始めること。
- インタビューはバランスのとれた対話でもなく、気さくな会話でも、激しい論戦でもないということを心に留めておくこと。
- 「はい」・「いいえ」で答えられる質問ではなく、幅広い返答ができるような質問をすること。
- 一度に一つづつ質問をすること。
- 簡潔な質問をすること。
- 応答内容をより明確にするため、フォローアップの質問をすること。
- 偏った、誘導的な質問は避けること。
- いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのようにして(5W1H)、で始まる質問をすること。
- 語り手の考えや感じていることを質問すること。
- 場所の名前、人名、日付、前後関係を具体的に質問すること。
- 語り手の話を注意深く聞くこと。
- 語り手の返答をうまく引き出すため、身振り手振りまたはアイコンタクトなどを使うこと。
- テープやバッテリなどを交換をする間、語り手に小休止を勧めること。
- 収録済みのテープ、ストレージディスク、電子ファイルには、それぞれインタビューの場所、日付、収録条件などの詳細を記入したラベルを貼っておくこと。
- 誤操作による消去を防ぐため収録済みテープは「ロック」しておくこと。
- 技術的あるいは周辺の事情で話しが中断された場合、電話が鳴り出すなどで、よりよい返答を得る機会を逃してしまった場合などは、もう一度同じ質問に答えてもらうよう頼むこと。
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抑制
- 沈黙が続いても取り乱さないこと。
- 質問の言い回しがあまりよくなかったとしても気にしないこと。
- * ビデオカメラの電源を入れたり消したりしないこと。
- インタビューの際に自分の知識や語彙の豊富さ、魅力などその他もろもろの能力をひけらかさないこと。
- 自分自身の見解や経験などをインタビューの焦点にしないこと。
- 語り手の専門領域を超えた物事や語り手が直接知らない物事についての質問は控えること。
- インタビュー中に、語り手がレコーダーをオフにして欲しいと頼んだ場合、失礼にならないようにそれを思いとどまらせること。
- インタビューの時間が長くなりすぎないよう時間管理をすること。
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撤収
- 「オフレコ」情報はできるだけ避けること。
- 適度な時間内でインタビューを終了すること。
- 語り手に「使用承諾書(Release Form )」あるいは「同意書(Deed of Gift )」に署名してもらうこと。
- インタビューの場所をもと通りにきちんと片付けること。
- インタビューのセッティングを背景に語り手の写真を撮っておくこと。
- 帰り際に語り手にお礼を述べ、その後お礼状を送ること。
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再確認
- 収録機器の作動性を確認するため、インタビューを始める前に、数分間試しに録画をし、きちんと収録されているかをチェックすること。定期的に収録状況をチェックすること。
- * インタビュアーはときおりビデオカメラのファインダーや LCD モニターのスクリーンを見て、撮影担当者との打ち合わせどおりに撮影されているかを確かめること。
- インタビュー終了後は、できるだけ早くインタビューを視聴し、音質、内容、インタビュアーとしての自分のパフォーマンスを確認すること。
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インタビューの仕方についてさらに詳しく学びたい人は、オーラルヒストリーに関するマニュアルが出版されているのでそちらを参照して下さい。初心者向けでわかりやすく簡単に説明してあるものとして Barbara W. Sommer and Mary Kay Quinlan, The Oral History Manual (Walnut Creek, CA: AltaMira Press, 2002) 、上級者向けとして、 Donald A. Ritchie, Doing Oral History (New York: Oxford University Press, 2003) や Valerie Raleigh Yow, Recording Oral History: A Guide for the Humanities and Social Sciences [Second Edition, paperback] (Walnut Creek, CA: AltaMira Press, 2005) などがあります。
インタビューやオーラルヒストリーに関する役に立つ情報はオンラインでも利用可能です。下記のリンクを参考にしてください。
参考文献
- 香月 洋一郎 『記憶すること・記録すること 聞き書き論ノート』 (吉川弘文館、2002年)
- 桜井 厚 『インタビューの社会学 ライフストーリーの聞き方』 (せりか書房、2002年)
- 桜井 厚編 『ライフストーリーとジェンダー』 (せりか書房、2003年)
- 桜井 厚 『境界文化のライフストーリー』 (せりか書房、2005年)
- 佐藤 郁哉 『フィールドワークの技法』 (新曜社、2002年)
- 清水 唯一朗 「オーラルヒストリーのススメ」 (『世界と議会』第471 号、2003年)
- 政策研究院政策情報プロジェクト編 『政策とオーラルヒストリー』 (中央公論社、1998年)
- 中野 卓, 桜井 厚編 『ライフヒストリーの社会学』 (弘文堂、1995年)
- 日本政治学会編 『年報政治学2004 オーラル・ヒストリー』 (岩波書店、2005年)
- ポール・トンプソン著、酒井順子訳 『記憶から歴史へ オーラスヒストリーの世界』 (青木書店、2002年) (原題:,Voice of the Past)
- 御厨 貴 『オーラル・ヒストリー : 現代史のための口述記録』 (中央公論新社、2002年)
全米日系人博物館フランク・H・ワタセ・メディア・アーツ・センターの録音担当のマサキ・ミヤガワ ( 左 ) とインタビュアーであるカリフォルニア州立大学ドミンゲス・ヒルズ校カレッジ・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマンサービス学部長ミッチェル・マキ博士(着席)はインタビューを受けるリチャード・コサキ博士とインタビューの前に刊行物について一緒に見ているところ。
インタビューの最中、写真は過去の出来事に関する名前やその他の詳細を思い出すきっかけを語り手に与えます。
制作クルーがカメラや照明機器の最終調整を行っている間にマキ博士(着席)はコサキ博士にインタビューでカバーされるトピックについてかいつまんで説明しています。
ワタセ・メディア・アーツ・センターのビデオカメラ担当アキラ・ボック(左、白シャツ)は語り手の映りを良く見せるため、拡散照明を使って柔らかな光をあてています。フレームの一番左にある黒い布地はコサキ博士の眼鏡に映る窓の反射を防ぐためのものです。
インタビューのあいだマキ博士は、身振り手振り、アイコンタクトを使うことによって、語り手の返答を最大限に引き出すよう試みています。
インタビューの間、録音担当ミヤガワは絶えず高性能ヘッドフォンを使って音声をチェックし、ビデオ担当ボックはフレームと照明が適切であるかをカメラのモニターと脇にあるビデオモニターの両方を随時チェックすることにより、撮影の技術面でのクオリティを管理しています。