アメリカ東海岸唯一の文芸誌『NY文藝』―その4/9
その3>>
3.『NY文藝』の内容
(1)創作(その1)
あべよしおと秋谷一郎は『NY文藝』の編集と発行に中心的な役割を果たしたが、彼らはまた創作においても重要な存在であった。したがって、まずこの2人の作品について、次に他の同人の作品について、概観しておきたい。
あべよしお(1911-1981)はオレゴン州ポートランドで生まれ、10歳の時に家族と共に父の郷里の岡山へ来た。1936年、早稲田大学を中途退学してアメリカへ帰り、戦時中には連合軍の対日情報部員としてインドへ行った。戦後、ニューヨークへ出て北米新報社で働き、様々な政治運動、社会運動に積極的に関わった。桜庭と結婚したのもニューヨークである。安保闘争の激しかった1960年…