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世界のなかの日本と世界

フロリダと天橋立-その3

その2>>

100年後のフロリダと宮津をつないだ酒井襄とは?

以上が、ヤマトコロニーと森上氏の歴史であるが、おさらいしてみればわかるように、最終的にこの「モリカミ」が誕生したその発端は、森上氏との直接の関係で言えば酒井襄氏である。記録によれば、彼は1874(明治7)年生まれで95年に同志社を出て、同志社の創始者である新島襄を見習ってアメリカへ渡ったという。名前の襄も、新島襄に倣ったらしい。50歳前にアメリカで亡くなっている。

「モリカミ」がまとめたヤマトコロニーの資料によれば、酒井家は宮津藩に使えた侍の家系だったという。ニューヨークに留学していたくらいだから、さぞ立派な家柄か優秀な人物で、故郷の宮津では知られているのだろうと思い彼の足跡も調べてみた。

府立宮津高校を訪れたデルレイの高校生

しかし、これが不思議なことに、何者なのかがよくわからない。まず、宮津市役所に問い合わせてみたところ、同市総務室で広報を担当する横谷宏明氏がいろいろと調べてくれたのだが、どうも酒井という名前のそれらしき家はあっても、酒井襄とはつながらないというのだ。

さらに、となりの京丹後市にも問い合わせてくれたのだが、手がかりはつかめなかった。ならば、一度現地を訪ねてみようと思い、たまたま姉妹都市のデルレイ・ビーチから高校生や、三堀氏など「モリカミ」の関係者がやってくるというので、6月半ばに出かけてみた。

郷土史の関係者をはじめ森上氏の親戚の井田氏やかつて父親がヤマトコロニーに入植したという稲穂隆夫氏、そして100歳になるという地元の方などに会って話を聞いたが、結論から言えば、酒井襄につながる事実はなかった。それならば同志社大学になにか彼の足跡は確認できないものかと、同大の社史資料センターにも問い合わせたが、手がかりはなかった。

酒井襄

酒井襄より少しあとの大正時代に入って、宮津出身者で同志社へ進み、その後アメリカに留学した別の人物の記録は郷土史に残っていたので、こうした進取の気性はこの宮津にはあっただろうとは推測できた。また、ヤマトコロニーに入植経験があるという、稲穂氏の父親については、宮津ではなく隣の旧熊野郡久美浜町(現・京丹後市)の出身であることから、ことによると酒井氏も宮津ではなく、周辺の地域の出身ではないかとも想像できた。

宮津に滞在中、横谷氏の運転する車で案内されて1時間弱、稲穂氏の自宅を訪ねた。隆夫氏によれば、父親の芳蔵氏は独身時代に、辻井氏なる地元の名士に誘われて入植したが、およそ10年で見切りをつけて帰国したという。その際に、大きなのこぎりや自転車をアメリカから持ち帰ったそうだ。

生前、父親から聞いたというおもしろい話を一つ聞かせてくれた。それは、コロニーにいたとき、強盗のようなものに襲撃されたときのことだった。

「映画でやる西部劇なんていうのは絵空事だ、実際は銃で撃ち込まれると、ただ家の中で怖くて隠れていて、音が止むと音のした方に、こっちからも撃ち返すだけだって言ってましたよ」。そう笑った。この話だけでもコロニーでの暮らしがどんなものか、資料では感じられないことが伝わってくる。

天橋立

100年以上前にフロリダに鉄道が敷かれ、開発がはじまったのがきっかけで、ニューヨークを経由して海外入植の話が京都の日本海の町に伝わる。そして大志を抱いた男たちが海を渡り、コロニーを作る。結局、当初の計画は挫折し、ほとんどの人々はアメリカの各地に散らばり、新しい生活と家族を作り、それがいまや3世、4世となっている。

その一方で、一人この地に居続けた森上氏は一代で終わったが、彼だけが確かにフロリダで自分の名前「モリカミ」を残した。それがもとで、いまやアメリカのティーンエイジャーが毎年気軽に宮津を訪れ、ホームステイしながら日本の高校生と交流し、日本三景の一つ、天橋立などを見て回っている。

酒井氏や森上氏がこんなことを想像できたはずはないといっては言い過ぎかもしれないが、ことの発端から100年後の成果を考えると、人の歴史の不思議さを思わざるを得ない。

参考ウエブサイト
* The Morikami Museum and Japanese Gardens

*本稿は、時事的な問題や日々の話題と新書を関連づけた記事や、毎月のベストセラー、新刊の批評コラムなど新書に関する情報を掲載する連想出版Webマガジン「風」(2010年6月30日号)からの転載です。 

© 2010 Association Press and Ryusuke Kawai

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Sobre esta serie

咸臨丸がアメリカに渡ってから150年、日本が近代社会へ移行してからいままで、多くの日本人が世界でその足跡を刻んできた。日本の遺産を引き継ぎながら、もうひとつの国や文化を受け入れて生きる。国家という枠組みを超えて日本とつながりをもつ人たちの世界をアメリカを中心に追い、日本人とはなにか、アイデンティティとはなにかを考える。

*この連載は、時事的な問題や日々の話題と新書を関連づけた記事や、毎月のベストセラー、新刊の批評コラムなど新書に関する情報を掲載する連想出版Webマガジン「風」 からの転載です。