来日就学生物語 ~マイグレーション研究会メンバーによる移民研究~

関西居住の学徒が移民・移住に関わる諸問題を互いに協力しあって調査・研究しようとの目的で。2005年に結成された「マイグレーション研究会」。研究会メンバー有志による、「1930年代における来日留学生の体験:北米および東アジア出身留学生の比較から」をテーマとする共同研究の一端を、全9回にわたり紹介するコラムです。

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第5回 普遍主義とナショナリズムの狭間で―1930年代における日系二世仏教徒の日本留学―

1 はじめに

日本から海外へいった日本人移民の子どもたち、すなわちハワイやアメリカ本土で生まれアメリカ市民権をもつ日系二世仏教徒のなかには、日本に留学して仏教を学び僧侶資格(海外での布教を行う「開教使」と呼ばれる)を得て帰国するものもあらわれてくる。

私の調査によると、早いケースでは1920年代後半から日本へ留学していたことがうかがえるが、多くは1930年代で年齢も20歳代かそれ以上であった。彼らは、高校または大学を卒業するか中退して来日し、龍谷大学か京都女子高等専門学校(現・京都女子大学)、あるいは僧侶養成学校である中央仏教学院に入学している。また出身地別ではハワイがアメリカ本土よりも日本留学を始める時期が早く、ハワイ出身者の約半数が1930年代前半のうちに日本で資格を取得して帰布している。さらにハワイの特徴としては女性の留学生が多いことで、ハワイ出身者14名中6名が女性であった。

彼らの仏教は、従来の日本人移民のみならず、あらたに日系アメリカ人の精神的支えへと発展することになるが ...

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第4回(後編) 彷徨(咆哮)する魂 ―帰米作家あべよしおの軌跡―

>>前編

3. あべの特異な作品世界

1972年に出版された3巻本『二重国籍者』の、第1巻はサンタ・アニタの仮収容所が、第2巻はグラナダ転住所が舞台であり、第3巻はインドでの連合軍情 報部員としての生活が描かれる。つまり自伝的とはいうものの、あべが3巻を費やし克明に描いたのは収容所時代と続く数年のみである。帰米としての波乱に満 ちた生涯のなかで、特に収容所生活を描こうという明確な意図があったわけだ。しかし出版当時はまだ一般に収容所体験が語られることがなく、ほとんど無視さ れる結果となった。別の言い方をすれば、内容と出版時期がうまくかみ合わなかった不運な作品ともいえるだろうか。

しかし何といっても『二重国籍者』を他と一線を画する作品と感じさせ、収容所を描いた作品を読みなれた読者にも一種異様と映る要因は ...

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第4回(前編) 彷徨(咆哮)する魂 ―帰米作家あべよしおの軌跡―

1. 帰米二世の光と影――あべよしおと秋谷一郎

「あべよしお」なる帰米二世作家をご存知だろうか。その作品世界は熾烈で容赦なく、その人生は壮絶な闘いの日々であった。帰米という経験の闇の部分を誰よりも深く抉り出し、「自分とは何者か」という問いを過酷なまでに自らに問い続けた。書くことに救いを見出そうと同人誌を立ち上げ、生涯にただ1冊の自伝的大著を著した。しかし満を持してのその作品も世間に注目されることはなく、失意のうえ病魔にも冒されたあべは、妻と共に自死して果てた。没後30年近く経った現在、唯一の著作『二重国籍者』は絶版になって久しく、出版社も無くなっている。今回は、この忘れられた異才あべよしおに光をあてたい。

ところであべは、シリーズ第2回に登場したカール秋谷一郎 とほぼ同年齢 ...

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第3回 1930年代の来日留学生の日本体験―メアリ・キモト・トミタ『ミエへの手紙』より―

メアリ・キモト・トミタ(1918~2009)著、『ミエへの手紙』(Dear Miye: Letters Home From Japan 1939-1946) (1995)は、国境を超えて移動した人々の経験を考える上で、私たちに多くのことを教えてくれる。これは、1939年に留学生として来日した日系アメリ カ二世のメアリが、1946年までの約7年間に及ぶ日本滞在中に、カリフォルニアに住む親友の日系二世ミエと、メアリと同じ二世留学生の親友ケイに宛てた 書簡を収録したものである ...

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第2回 ある帰米2世のあゆみ

「余は、関西学院で人間を学び、早稲田大学で日本を学び、オックスフォード大学で世界を学んだ」。これは、逓信大臣・拓務大臣を務めたこともある、民権政治家永井柳太郎1)の語りの一節であります。以下は、この言葉にあります関西学院出身の帰米2世カール・アキヤ・一郎(1909-2001、敬称略)2)についての小論であります。

1. 母、妹、弟と日本へ

カリフォルニア州サンフランシスコ生まれで6歳になるアキヤは、5歳の妹、3歳の弟とともに母親に連れられて ...

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