第15回 七章、良心ある白人との出会い
日米間の戦争という事情ゆえ、アメリカの日系人はアメリカ社会で全体として迫害をうけるが、その背景には人種的な偏見があり、この問題をどうとらえるかを、「ノーノー・ボーイ」のなかで、ジョン・オカダは随所で示している。
そのほとんどが、白人社会からの差別の実態とそれに対する苛立ちである。しかし、差別や偏見のない、「アメリカの良心」のような存在も一方でオカダは登場させている。それが、七章に出てくる、キャリックというエンジニアリングの会社を経営する白人男性だ。
物語を振り出しにもどすと、刑務所を出てシアトルに帰って来たイチローは、複雑な気持ちで狂信的な日本への愛国心を示す母と、頼りない父と、徴兵を拒否したイチローや母親に反発する…