二つの国の視点から

海外に住む日系人は約300万人、そのうち在米日系人は約100万人といわれる。19世紀後半からはじまった在米日系人はその歴史のなかで、あるときは二国間の関係に翻弄されながらも二つの文化を通して、日系という独自の視点をもつようになった。そうした日本とアメリカの狭間で生きてきた彼らから私たちはなにを学ぶことができるだろうか。彼らが持つ二つの国の視点によって見えてくる、新たな世界観を探る。

*この連載は、時事的な問題や日々の話題と新書を関連づけた記事や、毎月のベストセラー、新刊の批評コラムなど新書に関する情報を掲載する連想出版Webマガジン「風」 からの転載です。

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ベリナ・ハス・ヒューストン~自らをアメラジアンと呼ぶ日系2世の劇作家 -その2

>>その1

アメリカ人とアジア人の親をもつ子どもとして

戦争花嫁の子どもであるベリナ自身も、様々な差別に遭遇している。沖縄出身の日系移民から「あなたのお母さんは売春婦だった」と言われたこと、学校での優秀な成績を学校側が認めたがらないことなど。アメリカは彼女を日本の子と見なし、日本はアメリカの子と見なす。でも、彼女は、そうした両方の存在であるがゆえに、アメリカの持つ独立心の感覚と日本人が持つ集団やコミュニティの感覚の両方をうまく融合することを学び、新しい考え方を創造している、と自分の立場をポジティブにとらえている。

サンフランシスコにあるアジア系アメリカ・メディアセンター(CAAM)が1993年に配給したドキュメンタリー作品、「Do 2 Halves Really Make ...

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ベリナ・ハス・ヒューストン~自らをアメラジアンと呼ぶ日系2世の劇作家 -その1

以前に取り上げたフィリップ・ゴタンダと並んで、ベリナ・ハス・ヒューストンは、日系アメリカ人を代表する劇作家である。出版された作品数は、ゴタンダが8、ヒューストンが6、電子書籍を含めるとゴタンダが15で、ヒューストンが11である。この数字は、日系だけでなく、アジア系、という枠組で見ても、かなり多い。

2人の出自はずいぶん異なる。ゴタンダは両親とも日系人の日系3世だが、ヒューストンは父親がアフリカ・ネイティブアメリカン系、母親が日本人の戦争花嫁なので、3つの血が混ざった2世だ。戦争花嫁とは ...

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アケミ・キクムラ=ヤノ ~ ミクロとマクロの視点で日系人史を再構築する人類学者-その4

>>その3

「もし日本にいたら・・・」1世女性たちの人生

キクムラは、母以外の1世女性からも聞き書きを行っている。それをまとめたのが『Mukashi Banashi: stories of the past from Issei Women in Fowler, California(昔話-カリフォルニア州、ファウラーの1世女性たちの物語)』で、『Promises Kept』でも ...

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アケミ・キクムラ=ヤノ ~ ミクロとマクロの視点で日系人史を再構築する人類学者-その3

>>その2

父の教えを受け継いで

キクムラが自分史を完結させるためには、父、三郎のことも書く必要があった。三郎は1953年、アケミが9歳のときに不慮の事故で亡くなっていたため、母のときのように本人からの聞き書きができず、彼の周囲にいた人たち、すなわち、母、兄妹、日本の親類などから話を聞く必要があった。そのため、三郎のことをまとめた『Promises Kept(守られた約束)』を完成させるのに、一作目の『Through Harsh Winters』から10年を要した。守られた約束とは何だったのか ...

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アケミ・キクムラ=ヤノ ~ ミクロとマクロの視点で日系人史を再構築する人類学者-その2

>>その1

戯曲「賭博場」で扱った衝撃のテーマ

私がキクムラを知ったのは、1985年2月8日、当時、ロサンゼルスのサンタモニカ通りにあった EWP(現在はリトル・トウキョウにある)でのことだった。この頃、ロサンゼルスに住んでいた私はEWPの作品は欠かさず観にいっていた。この日、彼女が書いた戯曲、「The Gambling Den (賭博場)」という作品が上演された。アメリカ日系人社会における被差別部落の問題を取り扱った芝居で、私は椅子からすべり落ちるほど強い衝撃に襲われた。アメリカで日本の被差別部落のことを考えさせられるとは思ってもみなかったし、日系社会にそのような差別があることを知らなかったからである ...

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