“Wow! Mom look at that guy juggling so many balls!”
小さい男の子の声が耳をかすめる。まだ練習したての僕のジャグリングに喜んでくれるのはうれしいが、やっぱり少し恥ずかしく、くすぐったいような気持ちだ。そして、またいつものように、リトル東京の街角を人が過ぎゆき、僕は風景の一部になって時間だけが過ぎる。浅黒くなった肘から先がまるで別の生き物のように、目まぐるしく落ちてくるボールを拾いにいく。この時ばかりはカリフォルニアの太陽がもう少し柔らかかったらいいのにと思ってしまう。
身体は、いっぱしのジャグラーの演技をしたまま、僕の心は東京を旅立ち、ここロサンジェルスに来てからの様々な思い出を、勝手にぐるぐるとさまよっていた。会社を辞めると告げた時の上司の驚いた顔。家族が渡米を反対する中で、唯一成田空港まで見送ってくれた祖母との最後の握手。
「見送りがおばあちゃんだけで、ちょっとさみしいよね。すまないね、お前のお父さんは頑固だから。でも、翔ちゃんならきっと夢をかなえると信じているよ。がんばりなさいな。」祖母は最後まで味方でいてくれる。僕もなるべく平然を装った。
「お父さんの反対はもっともだよ。会社を辞めて、趣味程度に続けてきたジャグリングパフォーマンスのの勉強のためにカリフォルニアに行きたいなんて、正気の選択じゃ…