孤独な望郷 ~ フロリダ日系移民森上助次の手紙から
第37回 地獄の門一つ手前で助かる

南フロリダの大和コロニーの一員として渡米、コロニー解体後もひとり最後まで現地にとどまり生涯を終えた森上助次は、戦後、夫(助次の弟)をなくした義理の妹一家にあてて手紙を書きつづける。土地寄付の記事が新聞に出たため、アメリカ国内だけでなく日本からも含めて百通近くの手紙が来たが、そのほとんどが「金の無心だ」と呆れる。体が自由に動かないといいながらもトラクターに乗ることもあるようだが、あるとき溝にはまって転倒し投げ出された。「地獄の門一つ手前で助かった」という。
* * * * *
〈もう本は送るな〉
1975年1月
玲さん(姪)、お手紙や本を沢山ありがとう。この本は新刊だろう、読んだあとがない。殆どが自己批判だ。私には何の興味もない。読書は唯一の慰め ...