「ノーノー・ボーイ」の世界を探る
第2回 再発見された“我々の文学”

アイデンティティの問題などを鋭く問うジョン・オカダの小説「ノーノー・ボーイ」は、1957年に出版されたのち、世間の注目を浴びることなくほぼ忘れ去られてしまった。それが70年代に入り見直されることになる。
そのいきさつについて触れる前に、昨今のアメリカをはじめ世界各地での移民や民族間、国家・文化間に生じている摩擦や問題からみて、「ノーノー・ボーイ」を考察する意味をひとこと触れておきたい。
いま、なぜ「ノーノー・ボーイ」なのか
大統領選がはじまったアメリカでは共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏らがイスラム教徒への偏見、差別を助長しかねない言動に出ている。これに関連して戦時中の日系人の隔離政策を是認する発言をし ...