孤独な望郷 ~ フロリダ日系移民森上助次の手紙から
番外編: 森上助次を撮影したカメラマン・諏訪徹 — 庭園の仕事から国際的なフォトジャーナリストに — その2

時間をかけて親しくなる
諏訪さんは助次の人柄について「ものすごいいい人だし、親切だ」という印象を抱いた。が、その格好には内心呆れた。薄汚れたシャツと半ズボンで薄くなったぼさぼさの髪に、細い針金のようにもじゃもじゃの顎髭を伸ばしている。四部屋ある細長いトレーラーハウスのなかは、とにかく汚れていた。
その後も何度か、休みのたびにカメラは持たずにただ助次のもとを訪ねては、パイナップル栽培のことなどをきいてみた。トレーラーハウスには扇風機があったがエアコンはなくドアはあけたままだった。普通のベッドがあったが使っていないようで、いつも小さなベッドで寝起きしていた。
汚れたテーブルの上にはインスタントコーヒーのネスカフェの瓶や調味料、アルミの皿などが乱雑に置かれていた。入り口には盆栽風の松らしきものが鉢やバケツにおさまっている。森のなかのような孤立した暮らしだが、そんなところにも畑でとれたパイナップルやバナナを直接買いに来る人がいた。
諏訪さんは、汚い室内や暮らしぶりをみてなんだか助次が哀れに思えた ...