Laura Honda-Hasegawa

Laura Honda-Hasegawa was born in Sao Paulo, Brazil in 1947. She worked in the education field until 2009. Since then she has dedicated herself to exclusively writing which is her great passion. She writes essays, short stories, poems, and novels, all under a Nikkei lens.

Updated September 2018

community ja pt

デカセギ・ストーリー

第七話 ケンジンニョのすばらしい年末年始

日本生まれのケンジンニョは両親が別れた後、母親と一緒にブラジルへ渡った。

日本に残った父親は1年半後、約束どおり、息子を迎えに行ったが、意外なことが起きていた。元の妻のヌビアは再婚してリオに住んでいて、息子のケンジンニョは、父方の祖母、つまり自分の母親の家で暮らしていた。驚きだった。

しかし、空港に出迎えに来ていた息子を見てマサオはほっとした。ケンジンニョはニコニコ、おばあちゃんの側から離れなかった。「イラセマばあちゃんのとこからなんで出たの」「イラセマばあちゃんはとてもやさしいし、好きだ。でも、こっちのばあちゃんはもっと好きだ。大好きだ。だって、日本人だもん」と。祖母をぎゅっと抱きしめるケンジンニョはいとおしかった ...

Read more

community ja pt

デカセギ・ストーリー

第六話(後編) マユミは此処!FELIZ NATAL!

第六話(前編)を読む>>

何と言ってもナタール(クリスマス)はデカセギにとって特別な祝日だ。無関心な人は誰もいない。みな、その日が来るのを心待ちにしている。家族や友人と集り、その時だけは多忙な生活をしばし忘れ, 懐かしいブラジルの思い出話に花を咲かせる。

しかし、問題は日本でのクリスマスが祝日でないことだ。仕事を休めない人は前日にお祝いをするしかない。それでも、クリスマスを祝うのがデカセギの一番の楽しみだ。

クリスマスイブに大勢の人がパストール・マコトの家を訪ねる。地域に住み着いた頃から、クリスチャンであってもなくても、日系人が挨拶しに訪れている。牧師先生のメッセージを聴くのも目的のひとつだ。

そして、今年もいつものようにテーブルにはブラジル人が好きなパネトネとブリガデイロやキンジンなどのお菓子 ...

Read more

community ja pt

デカセギ・ストーリー

第六話(前編) 「Mayumi」は今、何処?

早朝、大きなバスケットを両手でかかえた若い女性が街を歩いていた。

公園のベンチに座り、ひと休みする。空を見上げると、濃い灰色の雲がどんどん横に流れ、自分も一緒にどこかへ連れて行かれるような気がした。下を見ると、枯葉が敷き詰められたカーペットのようで、今の自分の道しるべに見えた。「きっと、正しい方向に導かれているのだ」と、立ち上がり、バスケットを大事そうにかかえ、公園を出て行った。

すると、さらに、空は曇って今にも雨が降りそうになってきた。強い冷たい風も吹いてきたので、女性は先を急いだ。バスケットの中を気づかうように、歩き続けた。雨が猛烈に降ってきて、たちまちびしょ濡れになった ...

Read more

community ja pt

デカセギ・ストーリー

第五話(後編) クレイト 血と汗&サンバの物語

前編を読む>>

ふたたび転々と職を変えた。そのため、ブラジルの家族の存在はどんどん薄らいでいった。2歳になった娘の写真も見たことがなかった。そして、気がつくと、サンバのインストラクターになっていた。今まで一度も考えたことがなかった。まったくの偶然だった。

それは、ある日、彼が電車を待っていた時のことだった。反対のホームに紺のユニフォームを着た女子高生を見かけた。長い黒髪のお下げで淑やかな感じがかわいかった。早速話しかけようと、ジェスチャーを使い、いろいろ試みたが、彼女は困ったような様子をしていた。クレイトは、更に、アピールしようと、ダンスのようなさまざまな動作を敏捷でしなやかな体で演じてみた。

まもなく、向かいのホームに電車が入って来て ...

Read more

community ja pt

デカセギ・ストーリー

第五話(前編) クレイト 血と汗&サンバの物語

子どもの頃、クレイトはごく普通に暮らしていた。原っぱでサッカーをしたり、先生に叱られたり、近くの山に登って怪我をしたり、木登りをし手足の骨を折ったり、ゼーさんの庭のマンゴを盗み、逃げる途中、足をくじいたりしたものだ。

しかし、8歳のとき全てが変わった。母親が故郷のペルナンブーコに帰ったのだ。下の二人の娘を連れ、「わんぱく坊主」のクレイトを残して行った。以前から底なしに酒を飲む父親はさらに大酒飲みになり、とうとう病気で入院してしまった。退院後は、行方が分からなくなり、見かけた人もいなかった。

クレイトは伯父さんの家族と暮らすようになったが、「メスチッソ」だったのでひどい扱いをされた。クレイトの父親は兄弟の中で、たった一人 ...

Read more