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The Nikkei of Latin America and Latino Nikkei

ペルー日系人協会100周年記念と第19回COPANIリマ

COPANI開会式、ホルヘ山本博士とマリーノ森川博士の講演、ユース分科会、FOPAN(パンアメリカン弁護士及法律関係者フォーラム)会議、4カ国の中堅日系リーダーとのディスカッション・セッション、フエルサポプラル党のケイコ・フジモリ党首の基調講演。

2017年11月2日から5日にかけ、南米ペルーのリマで第19回「パンアメリカン日系人大会 (COPANI - Convención Panamericana Nikkei)」が開催され1、同時にペルー日系人協会(APJ – Asociación Peruano Japonesa)の100周年記念式典が行われた2

今回のCOPANIでは、「未来を構築して」をテーマに様々なプログラムが組まれていた。エコノミストのルイス馬場中尾氏による今の世界の経済動向についての基調講演を始めとする数々の講演、さらには日系アイデンティティーと移民、日本文化と日本語、日系人の教育による功績、ビジネスと共済組合の活動、女性の役割と社会福祉、若者のリーダーシップと今の価値観、といったワークショップが行われた。筆者も、日本政府の新たなラテンアメリカの日系社会との連携方針について、今後の可能性や課題について話をし3、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ペルーの中堅リーダーらとトークディスカッションを行った。その他、在リマ日本大使館のレセプション、ペルー日系人協会の100周年記念パーティー、そしてAELU祭り等、数々の素晴らしいイベントが行われた。

中でも最も注目されたのが、野党フエルサ・ポプラルのケイコ・フジモリ党首の講演であった。普段は日系団体の行事にあまり参加することのないフジモリ氏ではあるが、今回はアメリカ大陸を始め日本からも日系指導者や要人が来るということで講演依頼を快く承諾したという。講演では、自分の家族体験から描いた日系人像と今後の日系人の社会的役割について話された。とても穏やかな雰囲気で次世代の日系人にも温かいメッセージを送った。参加者にとって、貴重な体験になったに違いない。

その他、二人の日系専門家による講演も行われた。生活の質向上と幸福度の関係について研究をしている社会科学者・心理学博士のホルヘ山本氏4と筑波大学大学院(生命産業科学専攻)で環境博士を取得したマリーノ森川氏5による講演である。

山本氏は、矛盾や多様性に満ちた社会で幸福を理解するには、地域間の生活水準が幸福という価値観にどのような違いをもたらしているのかを考察する必要があるとし、ペルーの日系社会について鋭い分析を紹介した。

差別や格差、ときには迫害をも体験した日系人は、幸福追求の課程で理想化した自尊心が大きな壁になっているという。無意識に守りに入り、外からの批判やアドバイスをシャットダウンしてしまい、非寛容になる傾向がある。そうした「孤立」がエゴを増殖し、自己中心になって日系人の文化や言動を化石化させ、地元社会との共存や協力関係を妨げるリスクがあると警告した。

ペルーの日系コミュニティはすでに三世、四世の時代になっており、混血化も進み、地元社会との統合は進んでいるようにも見える。しかし所得が比較的高く、複数の日系団体や共済会、日系病院などに所属している日系人は、そうでない人たちとの格差や機会の不平等について無関心になる傾向があるという。そのような現状を踏まえ、「社会の完全な一員になるか、(自己排除して)不利になるか(O te integras o te jodes)」という強いメッセージで講演を終えたが、この言葉はとても印象に残った。

ペルーには、南米で最も成熟した日系社会がある。テロや経済低迷に悩まされた80年代には、多くの日系人が日本へデカセギに行き、一時はペルー日系人協会や沖縄県人会(AOP- Asociación Okinawense del Perú)6をはじめ、どの日系団体も会員減少で存続危機を迎えた。その後、約6万人に及ぶデカセギ者からの送金もあり、日系社会は財政的に少しずつ回復することができた。さらには各種事業に成功した日系人のおかげで、日系団体や共済組合は、組織的に大きく飛躍した。ひょっとすると山本氏は、こうした発展の結果や日系人として誇れる様々な価値観が、ペルー社会、即ち非日系人にも、もっと還元されることを望んでいるのかもしれない。

日本政府代表の外務省中南米局の林参事官とペルー国税・税関庁のビクトル・シギヤマ長官、日系人レストランオーナーらが企画したニッケイ料理のフェア「GOCHISO PERU」、ペルーの日本大使館人質事件の救出作戦「チャビン・デウアンタル」の演習に使用されたレプリカで現在資料館兼(殉職将兵の)慰霊碑の建物、JICA日系研修員の報告会、友人や元JICA研修生との再会(ペルー、ドミニカ共和国、チリ)、静岡県立大国際関係学部の教え子で現在スペイン語と英語をリマで勉強している前川ヒデキ君(在日ペルー日系3世)。

日系三世の森川氏は、幼少時代に過ごしたリマ北部のチャンカイ県エル・カスカホ(El Cascajo, Chancay)湿地帯の汚染対策事業について発表した。エル・カスカホ湿地帯に放置されていたゴミを一人で回収することから始めた森川氏は、のちに地元住民の協力を得て、自ら開発した浄化システムを使って湿地の水質向上に成功した。現在は、ペルーの環境行政の依頼を受け、鉱山廃水や生活廃水による汚染が深刻なチチカカ湖で、水質向上のための事業を展開しているという。森川氏は、常に地元住民の意識改善を促進ながら共同で取り組んでおり、そのことが高い評価を受けている。 

今回のCOPANIの特徴は、日本から数々の要人が出席したことだろう。今後の日本とラテンアメリカとの関係を重視する日本政府を代表して初めて外務省から中南米局林参事官が出席しただけでなく、JICAからも横浜国際センターの朝熊由美子所長と、本部の中南米部計画・移住課の松本課長も参加した。また、公益財団法人海外日系人協会の田中克之理事長や南山大学の浅香幸枝先生も出席し、その他ペルーやアルゼンチンで活動しているJICAの日系社会ボランティアも参加した。

参加者の年齢層や職業は多様であるが、COPANIは一度に各国の日系指導者や有力者が集まる貴重な場であり、日本とアメリカ大陸にある各日系社会との関係強化につながる場でもある。このような場で重要なのは、各日系コミュニティが抱える共通の課題や成功事例を把握する一方で、日系人がどのような活動で地域社会で評価されているか、また今後何をしたら地域社会の信頼と期待に応えられるのかを、みんなで考えることである。自分にとってCOPANIは、いつも何かを得ることのできるところだが今回も有意義な滞在を過ごした。

今回100周年を迎えたペルー日系人協会は、これまで様々な試練を乗り越えてきたが、日本との太いパイプを有効に活用し、資産家や有力者からの寄付や協力を得て施設の充実を図ってきた。現在、本部のある敷地内には、ペルー最大の劇場があり、総合クリニックや福祉センターも隣接している。また、近年はアマゾニアのプカルプパやマチュピチュに近いクスコという地方都市の日系人グループとも関係を復活させ、共同で日本文化事業等を展開している。今後は、地方の日系人もリマの事業に参加したり、日本との交流や研修にもっと参加・応募しやすくなることが期待される。

そしてAELU祭りの盛大さには、誰もが度肝を抜かれた。COPANI参加国の各代表団がVIP席に案内された後、日系人の歌手が次から次へとパフォーマンスを披露した。この祭りでとても印象に残ったのは、諸団体の元会長をはじめ多くの役員がボランティアとして会場内で与えられた役割を果たしたことだ。お水やお弁当配り、パレード順番の調整、写真やビデオ収録など、すべてにおいて役員や婦人部の奥様たちがもてなしてくれた。どの国の参加者も、手際の良さには驚きを隠せない様子だった。

参加者は多くの感動とプラスになる刺激を受けたに違いない。次のCOPANIは、米国カリフォルニア州のサンフランシスコ市で開催されることが確定した。新たな挑戦と楽しみが増えたと言える。

JICA横浜の朝熊所長とJICA本部の松本課長(中南米部計画・移住課)、APJペルー日系人協会100周年記念式典の晩餐会(パラグアイやアルゼンチンメンバーとの交流)、AELU祭り(パレート、研究者のメキシコ日系人ナオミ・徳増さんとアルゼンチンと所縁のある宮田温子弁護士)。

注釈:

1. COPANI 2017のFacebook   COPANIの写真やインタビュービデオが掲載されている。

2. ペルー日系人協会のサイトで機関誌「Kaikan」には、すべての行事の模様が掲載されている。

3. 2017年5月9日、「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」の報告書が薗裏外務副大臣に提出され、それが今度日本と日系社会との連携のベースになる。下記のサイトには、その報告者の日本語版、スペイン語版、そしてポルトガル語版が掲載されている。

「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」報告書の薗浦外務副大臣への提出

4. ホルヘ山本氏のFacebook 
La Pontificia Universidad Católica del Perúの山本氏のプロフィールページ

Los valores van disminuyendo cuando aumentan las metas materiales(物質的な目標が増えると幸福という価値が下がる)」, (RPP Noticias 2018年3月7日)      

Jorge Yamamoto: "Huancayo es la ciudad que tiene los mejores índices de felicidad"」(RPPNoticia

5. マリーノ森川氏のFacebook
筑波大学大学院の森川氏のプロフィールページ

6. Asociación Okinawense del Perú (AOP) 
AOPのFacebook

        

© 2018 Alberto J. Matsumoto

100th Anniversary APJ COPANI Lima peru

About this series

Lic. Alberto Matsumoto examines the many different aspects of the Nikkei in Japan, from migration politics regarding the labor market for immigrants to acculturation with Japanese language and customs by way of primary and higher education.  He analyzes the internal experiences of Latino Nikkei in their country of origin, including their identity and personal, cultural, and social coexistence in the changing context of globalization.