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The Nikkei of Latin America and Latino Nikkei

大卒日本人の就職と外国人二世の就職

日本の教育制度は世界的にも高い評価を受けており、OECDが15歳を対象に行っている2012年実施の学習到達度調査では、日本は数学的リテラシーでは8位、読解力で3位、そして科学的リテラシーで3位である1。高校までの中等教育は非常にレベルも高く、義務教育(小中)を終えた卒業生の98%が高等学校に進学していることは世界一の水準である。その後、53.5%が大学に進学している2

進学率と就職率、文科省webサイトから。(クリックして拡大)  

高卒後16.8%が就職しているが、地域別の就職率をみると東北や東海、九州の一部では約30%、東京や神奈川は5~7%となっており、その分大学への進学率が高く、60~65%である。ここで重要なのは卒業後に職に就きたいと希望しても、それが可能かということである。

ブラジルのサンパウロ大学法学部、いまだに学部によっては日系人の存在は「脅威」であり、それが社会的にも尊敬を集めている。人口比率で日系人は0.75%だが、学部によって何割かは日系人である。  

南米をはじめ、殆どの国では高学歴化もしくは大学進学の大衆化が進んでいるが、卒業しても自分の専門分野はもってのほか普通の生活ができる安定した職に就けない者も多い。近年はどの国でも大学院卒の不安定雇用化または無職化が問題になっている。社会的に大きな損失である。

他方、景気が多少低迷している南米では、主にブラジルやペルー、コロンビアやパラグアイ等では輸出産業が成長しており雇用創出率も高い3。しかしすべての分野において技術系やマネジメント系、主に財務会計や管理等の専門職では人手不足が深刻で、スペインや欧州全体に対して求人を出す羽目になっている4。それでも大卒の就職率は半分にも及ばないことから、これらの国々では学問と労働市場のミスマッチが問題なのである。

日本という社会は、非常に合理的かつ効率のよい学生の育成と、それを受け入れる労働市場が存在する。少なくとも最近まではそう考えられていた。学生たちも自身の学問や専門性をあまり問わず、目的は「就職」であり、好みの企業や業界等を優先してきた。実際、大手企業や霞ヶ関の中央官庁、官民の出世と成功が期待できる職に就くのはほんの一部で、一流大学の卒業者であっても全員がそうした仕事に就けるわけではない。

この現実を踏まえてか、一般の日本人学生は小中高をどのような学校で勉強したかによって、またどの程度の受験競争を乗りこえてきたかによって、ある程度知名度の高い大学に進学する(これも全体の3割程度でその他は地元の私立大学に進学)。このチャレンジには、ほとんどの家庭にとって多大な労力と資金力の捻出を意味し、高校生活の半ばで、ある程度どのような進学を試みるのか、どのような「将来を築ける」のか、現実的にイメージしなければならない。まったく見通しもつかない状態で深く考えず無難な大学に進学する者も、当然いる。

日本には大学が783校あり、そのうち86が国立、92が公立(県立、市立)、605が私立で、すべてを含むと280万人の学生が在籍している。他方、忘れがちであるが最近益々評価の高い専門学校には62万人が在学している5

大学の場合、2014年3月の統計によると、卒業予定者が56万人でそのうち就職希望者が42万人、実際内定を得て就職した者は35万人である(毎年これぐらいの卒業生が労働市場に輩出される)6。卒業生の75.5%が仕事を求めているのであり、その割合は国公立大生が55.4%で私立大生が85.4%である。約83%が内定を得ているが、実際の就職率は94%になる7

男女別にみても大きな違いはないが、女性の就職率が若干高く95%で、文系が81.2%で理系が90.7%である。地域別では、関東が最も高く88.3%で、次いで近畿が83.4%、北海道・東北が81.4%、中部が81%、九州が74.8%で、中国・四国が73.2%で関東と15ポイントの差もある。

これらの統計をみる限り、日本には過剰なまでの数の大学があり、欲を言わなければ私立大学ならどこかには入学できるし、卒業することも可能だということが言える。逆の発想で言えば、勉強したい分野がはっきりして有名無名を問わずどこかで勉強する覚悟さえあれば、それなりの高等教育を受けることはできる。

在日ペルー人には、中学から高校にかけてある程度努力し、さらに親の金銭的サポートがあるなら、大学には行けると主張する。ただ、目標も持たず多くの学生のようにただ椅子を温めているだけ、または授業にも出ずアルバイトか部活に明け暮れるているのであれば、進学に意味ないと強調する。

私は、神奈川大学スペイン語学科で8年前から、静岡県立大学では4年前からスペイン語の講師(非常勤)として教鞭をとっているが、これまで複数のペルー、アルゼンチン、ブラジル国籍の学生を見てきた。そのほとんどが、90年代に親と来日したか日本で生まれた出稼ぎ就労者の子弟である。語学又は国際関係という分野で学んでいる学生たちだが、家族の文化的背景が相まってスペイン語の受講生としては成績もよく、南米に対する関心は高い。

しかし、彼らの卒業後の行方は私がこれまで把握している限り、持ち前の多文化的な可能性や、最近注目されているグローバル人材としての可能性を十分に発揮できていない。そのうえ他の日本人卒業生と同様の就職も達成していないケースが目立つ。就活中何らかの課題に気づいて目標を更に下げた結果、無難、もしくは目立たない選択をしているのかもしれない。中には学生時代にやっていたアルバイトをそのまま非正規雇用として継続している者もいる。

日本では大学生の内定と就職は重要な要素で就活には多くの労力と資金が必要であっても、普通に就職して社会経験を積み重ねることで自分の道(生き方)を切り開くことができる。語学力を活かすという場合でも、その水準がかなり高くないと、日本人との競争には太刀打ちできない。優秀な人も多いし、上には上がいるということをつくづく痛感させられるからだ。

移民の子弟即ち外国人の二世にとっては、どこの国でもそれなりの教育を受けていても就職や資産の形成というのは大きなネックである。だから、海外の日系人は教育では誰にも負けないという意気込みで社会進出を目指してきた。そうした私の体験からも、在日ペルー人等の子弟には、もっと失敗を恐れず積極的に行動し、多様性のある人材を求めている市場をフルに活用し、努力と忍耐、勤勉と継続で、大きな可能性を手にしてもらいたい。きっとそれが大きな社会貢献になり、日本社会もいずれ彼らの存在を認めるに違いない。 

注釈:

1. PISA調査 http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html
2012年にはOECD34カ国、非加盟31カ国、合計51万人の生徒が調査の対象になった。

2. 日本の教育統計 http://www.stat.go.jp/data/nihon/22.htm

3. ブラジルの失業率は5.4%(2013年)、ペルーが5.9%、コロンビアは多少高めの10%である。ただ、若者の都市部失業率はこの倍だとされている。それでも、分野によっては求職者がいないという。

4. スペインの失業率は26.4%で、若者に関しては54%である。2008年ぐらいから、毎年数万単位の若者、それも比較的学歴が高く経験のある者が中南米諸国に移住している。何十万ドルの年収契約で行く者は希で多くは現地従業員と同じか経験と専門に応じて少し高めの報酬を受けている。
http://www.publico.es/espana/418164/los-espanoles-emigran-un-21-9-mas-con-la-crisis 

欧州からラ米への『移住』とは」(ディスカバー・ニッケイ 2013年7月19日)

5. 専門学校は技術的に専門性のある教育機関で、2~3年のカリキュラムで学校によっては入試も非常に厳しく、卒業するのも容易ではない。多くの学校が就職率ほぼ100%を達成している(平均は95%前後)。いずれにしても、大学と専門学校を含むと8割の若者が高等教育を受けていることになる。

6. 厚労省「平成25年度「大学等卒業予定者の就職内低状況調査」」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000036530.html 

7. 大学が把握している内定率等を数値化しているが、当局がその年の4月で得たデータが「就職率」である。

8. 留年より卒業後に職探しを〜内定ゼロで、就活生の親 2014.08.05 Kyodo News-47 News.
http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014080501001858.html

 

© 2014 Alberto J. Matsumoto

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About this series

Lic. Alberto Matsumoto examines the many different aspects of the Nikkei in Japan, from migration politics regarding the labor market for immigrants to acculturation with Japanese language and customs by way of primary and higher education.  He analyzes the internal experiences of Latino Nikkei in their country of origin, including their identity and personal, cultural, and social coexistence in the changing context of globalization.