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Nikkei Chronicles #1—ITADAKIMASU! A Taste of Nikkei Culture

NIKKEIと料理文化

以下では日本食の特質について考える。その意図は、NIKKEIの人たちが日本食について日頃イメージし・思っていることと、以下で指摘することとの間に共通点・共有部分があるか、ないか、また、たとえそれらがなくともNIKKEIの人たちの賛同・納得が得られる部分があるか、ないか、を考えること、にある。さらに言えば、そうした結果に至るのは何故なのかを考えてみたいからである。そうするなかで、NIKKEIの人たちの、ひいては世界中の多くの人たちの、日本食についての理解や認識が深まるのではないか、と考える。これが、いささかテーマとずれるが、あえて取り組んだ理由である。

2005年7月20日、朝日新聞は「和食人口の倍増計画」と題する記事を掲載した。それは、世界の和食人口(日本食を1年に1回以上食べる人)を、官民の協力のもと5年後には推計で現在の2倍の12億人にしようという計画である。目標が達成されれば、日本料理は、フランス料理、中華料理に次ぐ、世界の第3勢力になる、そのカギは生魚である、という。達成されたかどうかはともかく、2012年6月15日の同紙は、sushiを先兵に魚食文化は世界に広まった、生魚のうまさに人々が気づいたからであろう、と論じている。加えて、ニューヨークなどでは日本酒の消費が、フランス料理店、アメリカ料理店など日本食以外の店にもすこしずつ拡がっている、と報じている(同紙、Globe 2012年6月17日)。

生魚や日本酒などに代表される日本食が、このように注目されるようになってきているのはどうしてなのであろうか。これまで、ファースト・フードに対比されるスロー・フードの観点から、また、肥満や健康の視点から、日本食の利点や特質が論じられることが多かった。以下では、これらとは異なる立場から、日本料理の特質を文化の観点から考える。

結論を急ごう。日本料理の特質は以下のように整理できる、と考える。

1)季節感の重視:日本語で旬と言われるが、どの食材には食べ頃があり、その持ち味を生かした、季節感あふれる料理がつくられる、ということである。上で「生食のうまさ」が指摘されたが、実は、どの魚も、年中、美味なわけではない。魚ごとに美味しい季節が異なる、冬にはぶりを、夏は鰹を、等はその一例である。

2)料理を入れる器:料理にあった多種多様な器が用意される。材質(陶器、磁器、漆器、ガラス、金属製等)、サイズ(大型、小型等)、形(丸型、四角型、多角形、底の深いもの・浅いもの等)、彩色(無色、有色、無地、模様付き等)の組み合わせによって多くの器が、出来上がった料理に合わせて活用される。夏の刺身には見た目にも涼しげなガラス類が、冬は熱を逃がしにくい厚味の彩色器が、また、秋はモミジ、春はサクラをそれぞれイメージした器が、用いられる。食欲がそそられ、心が豊になる一因であろう。

<<オカラの別名 卯の花>> トッピングは唐辛子 別名・鷹の爪

3)美意識あふれる盛り付け:料理の魅力は盛り付け次第で異なる。料理人に芸術的センスが要求される所以である。盛り付けは料理人の最後の腕の見せ所である。なぜなら食事は眼で見て楽しみ、鼻で季節の香りを嗅ぎ、手で器の心地よい感触に接しながら、口で美味しく味わうものだからである。日本料理は、単に食欲の充足のみを追求するのではなく、こころをも満足させることを念頭においてつくられるからである。この盛り付けは、花、とりわけサクラを愛でる心に通じてものがある、と考える。これは、比喩的な意味での日本料理独特の隠し味と言えようか。さらに言えば、耳に心地よく響く言葉遣いも、盛り付けと同じように、隠し味のひとつであろう。たとえば、醤油を「ムラサキ」と、雪花菜(おから)を「卯の花」というふうに、優雅に表現するなかに、俳句心をくすぐられる思いを経験した、あるいは、古き昔の和歌や俳句を連想した人は多いのではなかろうか。料理は、食する時間のなかで消え行く運命にあるものの、一瞬とはいえ遠い過去とのつながりを意識させる文化的作品の一面をも持ち合わせている、と考える所以である。

4)麹文化の活用、隠し味の多用:最後に、酒を始めミソ、醤油などの発酵食品を調味料として活用し、加えて、本来の意味での隠し味、つまり、ある調味料を目立たぬ程度にごく少量加え、全体の味を引き立たせる、そういう技法が指摘できる。つまり、控えめな脇役でいながら、主役の役割を果たす調味料の投与である。もちろん、日本酒は、隠し味としての大役を果たすのみならず、主役として、料理に合わせて、ある時には冷酒で、別の時には熱燗で、場合によってはぬる燗で振る舞われる。

<<醤油の種類による色の違い>> 左から (薄口醤油)煮物用・主として関西で使用、(濃口醤油)標準的な醤油・種類も豊富、(刺身醤油)刺身用の濃口醤油

以上、日本料理が注目されるようになった理由について考えてきた。潜在的・顕在的に日本文化のエッセンスが垣間見られ、それらと無関係でないことが分った、と言えよう。

NIKKEIの人たちは、上の多少とも誇張された指摘に対しどのような感想をお持ちであろうか、また、日本料理に対してこれまでどのようなイメージをお持ちだったのであろうか。最後に、複数の文化を持ち合わせておられるNIKKEIの人たちにお教えいただきたい、問いをいくつか記しておきたい。

  1. 年齢を重ねるにつれて、成長期に食べたお袋の味が恋しくなるものだと、よく言われるが、そのようにお感じになることがあるだろうか。
  2. 「ルーツは日本だから、日本文化を理解しようと思えば日本料理をよく食べ、好きになること、逆に、日本料理をおいしいと思わない限り日本文化を理解できないのではないか」。こうした指摘をどのように判断されるか。
  3. かつて、「男の幸せは、日本人の妻をもらい、アメリカの家に住み、中華料理を食べること」という意味のことを聞いたことがある。これは当たっているのだろうか。

以上

© 2012 Takeo Yamamoto

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About this series

For many Nikkei around the world, food is often the strongest and most lasting connection they have with their culture. Across generations, language and traditions are often lost, but their connections to food remain.

Discover Nikkei collected stories from around the world related to the topic of Nikkei food culture and its impact on Nikkei identity and communities. This series introduces these stories. 

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