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もっと日系の意見を聞いてくれればいいのにシアトルの日系スーパー、宇和島屋・モリグチ会長 - その2

その1>>

日本人からアメリカ人になっていく不思議さ

――明治時代から多くの日本人が移民として海外に出ましたが、同じ頃日本の地方から多くの人が東京などの都市に出ていきました。たまたま向かった先が国内か海外という違いが、後の世代にとっては非常に大きな違いになりますね。

モリグチ:  最初にひとつ違うのは、アメリカに来た人は、いつかお金を儲けて日本に帰ろうと思っていたのがほとんどでしょう。でも、目的地が東京だったら田舎に帰らないのでは。私の父親の富士松も当初は日本に帰る予定でした。

彼は長男だったし少しは土地も持っていたから、長いことずっとそう思っていたはずです。しかし、亡くなる1年前に孫ができました。すると驚いたことにこちらで墓を買いました。そして市民権を取って、さらに妹の娘に土地をあげたんですね。以前から考えていたんでしょうが、孫ができたのはグッドエクスキューズ(いい言い訳)だった。

ウイングルーク博物館(シアトル)に展示された日系アメリカ人の歴史

――先ほどの話に戻れば、故郷を離れた人の移住先が日本国内かアメリカかでは、その次の世代が日本人であり続けるのか、アメリカ人になっていくのかという大きな違いが生じるわけです。そういう不思議さを考えたことはありますか。 

モリグチ:  確かに不思議ですね。もし私の親父が(故郷の愛媛県を出て)アメリカではなく東京に行っていたら、僕も毎年お盆なんかは四国に行ったんだろうね(笑)

――2世のなかには日本に行ったこともないという人がけっこういるようですが、自分たちのルーツには興味はないのでしょうか。

モリグチ:  日本に行っていない人が多いですね。2世はルーツに対する興味はそれほどなかった。戦争が終わって日本との関係を持ちたくないという複雑な気持ちがあったんでしょう。僕の友だちの2世は日本語をあまり話さなかった。1世とはほとんどコミュニケ-ションができなかった。

戦争が終わっていやいや帰った人もいますが、みんな苦労しています。成功して帰った人もいるけれど、帰って何もなくて辛い思いをした人が多かったです。

宇和島屋オフィスに飾られたモリグチ家の写真

数は減っても留学生はみな優秀です

――日本はこのところ混乱しているし、元気がないように見えるでしょうか。日本からの留学生も減っていますね。

モリグチ:  確かに考え方が縮んでいるように見えます。でも留学生は数は減っているかもしれませんが、来ている人はみな優秀です。北米報知で活動するインターンの若い人をみても頭もいい。昔のインターンは仕事をしたくないという人もいましたが、いまはみんなポジティブでまじめです。将来は明るいでしょう。

――最後にアメリカのいいところはどんなところでしょう。

モリグチ:  日本は会社に入っても、出身学校などでまとまったりするけれど、アメリカはどこから来てもすぐに人と人が交わる。アメリカ人は興味が一緒だとすぐに話ができる。お金を持っているとかどこの学校へ行ったとかはあまり関係ないですね。

「僕は大学へは行っていないんだ」なんてみんな平気で話す。パーソナルインタレストが同じなら話ができる。日本人はそういう点まだ遠慮があるんじゃないですか。飛行機なんか乗ると、アメリカ人は10分もすると、隣の人が“どこから来たの?”とか話しかけてくるけれど、日本人は3時間乗ってても何も話ができない、なんていうことがありますね。(笑)

* * *

トミオ・モリグチ(森口富雄)

宇和島屋取締役会長。シアトル出身の日系2世。1961年ワシントン大学機械工学科卒。父親の富士松氏は愛媛県八幡浜町(現八幡浜市)からワシントン州タコマへ移民、日本食品を扱う店を開く。そのあとを継いで62年から宇和島屋の経営に関わる。邦字紙、北米報知の発行人をはじめ、日系コンサーンズ理事、全米日系人博物館理事、アメリカ国家に貢献した日系アメリカ人の歴史を語り継ぐ National Japanese American Memorial Foundation の理事などを務める。長年にわたりシアトル社会で数多くの事業チャリティーやボランティア活動で表彰を受ける。妻は中国出身。日系人の前妻の間に1男1女と3人の孫がいる。2005年には日本政府から対日理解促進と日系福祉向上の功績で旭日小綬章を受賞。


* 本稿は、JB Press (Japan Business Press - 日本ビジネスプレス)(2012年7月31日掲載)からの転載です。

© 2012 Ryusuke Kawai, JB Press

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About the Author

Journalist and non-fiction writer. Born in Kanagawa Prefecture. Graduated from the Faculty of Law at Keio University, he worked as a reporter for the Mainichi Shimbun before going independent. His books include "Yamato Colony: The Men Who Left Japan in Florida" (Shunpousha). He translated the monumental work of Japanese American literature, "No-No Boy" (Shunpousha). The English version of "Yamato Colony," won the 2021 Harry T. and Harriette V. Moore Award for the best book on ethnic groups or social issues from the Florida Historical Society.

(Updated November 2021)

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