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Kizuna: Nikkei Stories from the 2011 Japan Earthquake & Tsunami

東日本大震災後の経済的被害と日系人の雇用

まだ暫定的な数字でしかないが、今回の大震災で被災した東北・北関東(茨城の北東部及び千葉の東部沿岸地域)の経済的損失は少なくとも25兆円という推計が出ている(放射能被害賠償額は含まれていない)。これはペルーのGDP国民総生産の2.5倍又はアルゼンチンのGDPに相当する金額である。仮に30兆円と見積もっても日本のGDPの7%に当たる。もっとも被害が深刻だった岩手県の県民総生産は5兆円、宮城県と福島県がそれぞれ9兆円で、合計23兆円ぐらいだが、茨城県を含む(13兆円)と36兆円になる。被害額と地域の県民総生産が同額である。年間3兆円以上の予算が復興に必要だとされている。

上野駅。東北地方の玄関口

また、東北3県、岩手県、宮城県、福島県の総人口は570万人で、北茨城地域や千葉県の一部を含めると6百数十万人になるが、地震と津波の被害を受けた沿岸地域にはその半分の300万人程度が居住していた。被災直後にはその沿岸南北400キロに及んで50万人が避難したこともその災害規模を表している1 (人的被害も90%以上が水死であり6割超が60歳以上の高齢者であったことが判明2 )。

東北地方は、半導体や精密部品の重要な生産拠点であり(関東、東海に次いで三番目の製造業拠点)、今回の震災で自動車メーカーや電子産業に大きな影響を与えた。海外メーカーも一部の生産を停止したり、新商品の販売日程を延期したりしたが、4月の半ばからは自動車メーカーの生産も限定的とはいえ再開し、仙台港からトヨタ車300台が海外向けに出荷された3 。とはいえ、今後は更に中国、台湾、そして韓国等の部品製造会社とのシェア争いは激化するに違いない。

今回の震災はこうしたグローバル的な生産構造の弱点も浮き彫りにしたが、今後の復興計画にはそうした要素等も考慮した産業政策や、農牧畜水産・観光産業のありかたも検討されなければならない。新たな可能性も出てくるだろうが、公的機関保証の融資があっても再興できない企業や商店、事業所も出てくることが予想される。

今回福島原発からの放射能汚染で農作物や魚介類が出荷停止又は制限されたが、農牧畜漁のシェアは全国の15%程度で、供給という観点からは限定的な影響があったとはいえ、一時的な輸入や全体の消費自粛で大きな品不足には至っていない。

夏はもっと節電が必要になりそうだが、これまでのライフスタイルや無駄遣いの見直しのきっかけにもなっている。

日本経済全体への打撃は当然大きく、自動車や部品、映像・音響機器の輸出減と、エネルギー資源等の輸入増となるため、ここ数ヶ月は貿易赤字に転落する可能性が高いと報道されている4 。しかし、東北は関東の経済力によって回復していくという側面もある。東京都だけでも約100兆円の県民総生産であり、これはブラジル一国に相当するものだ。神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城、山科を入れると、230兆円相当になり、日本全国の約半分、またはフランスに相当する経済力である。県民一人当たりの所得をみると、東京や神奈川は平均500万であるのに対し、東北はその半分超である5 。こうした観点からも、関東の消費回復が東北の復興を支えることになる。

労働市場としても、この地域の非正規雇用率は45%で全国平均の35%より10ポイントも高い。失業率は5.8%で全国平均より0.7%高い(2010年末の統計)が、震災の被害で業種によっては一時的には30%以上になるという指摘もある。ただ復興事業が実施されていけば、多くの者が雇用されるだろうし、職種によってはむしろ人手不足になることも予想される。実際、職業安定所ではがれき処理関連や仮設住宅建設関連の求人も出てきているという。

東北地方の外国人労働者率は6%で6 、アジア系が多く漁港や農業の組合等を通じて研修生という身分の「労働者」が多かったのである。震災直後、ほとんどが帰国したので、この空きを多くの日系就労者はチャンスだと捉えている。実際、リーマンショック後には相当数の南米日系人が千葉県や茨城県の沿岸都市や漁村に転居している。賃金もそれほど高くないかもしれないが、建設業やがれき処理の時給・日給単価がかなり高いという噂もでており、さっそく職安に出向いている日系人もいる。同じような可能性が、金融や大学の教職でも発生しそうである。高度人材は放射能騒動で一斉に帰国し、未だに戻らない者も多数存在しているようだが、一定期間以内に職場復帰しない場合はおそらく国内の人材で補充されることになる。

また、定住外国人に関しては、隣国の中国や韓国、台湾出身の多くは一時帰国したとはいえ、3月末から4月に入ってかなりの数の外国人が戻ってきている様子である7

中南米出身者に関しては、約1万人が出国したとみられるが(ブラジル人が7,500人、ペルー人が1,800人)、同時期に3千人ぐらいが入国しておりそのほとんどが再入国者である。この日系就労者たちも年齢的に40代、50代が徐々に増えてきており、スキル無しでは非熟練労働でも職種によっては本国でも仕事に就けず、就けても賃金がかなり低いという。これまでの産業や業種に留まることは困難なケースも出てくるが、東北地方の高齢者と類似した試練が待ち受けていることももう一つの現実なのかもしれない。東北地方とこの日本がどのようにこの困難を克服するか目の当たりにすることができるが、残った者は震災後以上に冷静に今後の経済や労働市場の変動を敏感に観察し、社会の一員として尽力しなくてはならない。

川崎駅のショッピングモール3月19日。外資系のアパレルメーカーはすべて休業、計画停電で店も電車もペースを落として営業しているが、震災から10日目でも、多くが外に出て一時を過ごしていた。

注釈:
1. 1995年の阪神大震災と比較すると、兵庫県や周辺の被災地域の県民総生産は東北の倍以上70兆円で、被害総額も10兆円程度だった。都市直下型の地震だったため一部の地域に被害が集中し、死者・行方不明者が約6,500人で、負傷者が43,000人だったのである。今回は被災地域が広範囲で大津波によって破壊された街や漁村が多かったため、負傷者はそう多くなくとも死者・行方不明者は約30,000人に達している。また、地場産業への被害も大きく、中小の水産加工会社やサービス部門の店の再起はかなり厳しいとされている。4月半ばの避難者数は12万人である。

2. http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110419-00000100-mai-soci

3. http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866918/news/20110418-OYT1T00357.htm

4. http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/fx/news/20110421-OYT8T00302.htm

5.   国       人口      GDP            一人当たり平均所得    国土   日本との面積比率
ブラジル      約2億人     1兆5000億ドル   8,200ドル      850万km2      23倍
アルゼンチン 4000万人      3000億ドル   8,000ドル      280万km2      7.4倍
ペルー       2900万人      1300億ドル    4,400ドル      130万km2      3.4倍
フランス      6500万人   2兆6000億ドル   42,000ドル       63万km2      1.7倍
ドイツ        8200万人   3兆4000億ドル   41,000ドル       34万 km2      0.9倍
日本         1.2億人       5.5兆億ドル    38,000ドル        38万 km2       ----
関東        4200万人    2兆6000億ドル   50,000ドル      3.2万km2      10%
出所:ジェトロ他、2009年統計

6. 岩手県の外国人数は6,349人(中南米出身が201人で7割がブラジル人)、宮城県は16,500人(275人)、福島県が12,153人(502人)だった。

7. http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00062.html

© 2011 Alberto J. Matsumoto

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About this series

In Japanese, kizuna means strong emotional bonds.

This series shares stories about Nikkei individual and/or community reaction and perspectives on the Great Tohoku Kanto earthquake on March 11, 2011 and the resulting tsunami and other impacts—either about supporting relief efforts or how what has happened has affected them and their feeling of connection to Japan.

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