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南米の日系人、日本のラティーノ日系人

在日日系ラティーノの同胞団体とその課題とは

南米の日系就労者が来日してから20年になるが、これまでプラジル人をはじめ、ペルー人やボリビア人も日本国内各地で同胞互助や地域社会との交流や親善のために団体を設立してきた。ペルー人の中には以前、海外在住の日本人移民の県人会のような、出身地別の同胞団体もつくったケースもある。

しかし、ほとんどのイニシアチブは数年、中には数ヶ月で消滅している。筆者は、団体設立の際、定款の作成や法人登記について相談または翻訳依頼を受けることがあるが、その団体の運営や資金調達方法についてはあまりきちんと認識していない。形式的要素にこだわるあまり、信頼関係をベースにシンプルかつ現実的に運用するという発想が欠けていることが多いと実感してきた。

日本の市民団体やボランティア・グループも、国や県、市の外郭団体、公益法人以外はそのほとんどが任意団体であり、サークル的な小規模団体も少なくない。近年はNPO法人(法人格を有する非営利団体)が増えているが、設立には資金や目的実行のためのマネジメント能力の人材と資金確保の事業計画等が必要である1。認定されるには株式会社を設立するより提出書類が多く、毎年所管の内閣府または都道府県に決算報告を提出しなくてはならない。ただ、実績が評価されると国税庁によって寄付控除対象の団体として認定が受けられるメリットがあり、場合によっては安定した資金調達が可能になる2

ただ、法人格がなくとも立派な社会活動を行っているところはたくさんある。こうした団体は、設立者や中枢メンバーの機動性が高く、専門知識も有しており、外国人を支援している場合、その対象者の背景や本国での経緯、現状等もかなり的確に把握している。そうでない団体は、活動そのものの趣旨や目的が曖昧で空回りすることが多く、支援の対象者からもあまり評価(感謝)されないことが多い。そのうえ、意図的ではないにしても支援の依存度を高め外国人の自立支援を阻害していることもしばしば見られる。そうした事業が団体の財政を更に苦しくし、活動停止に追い込まれることもある。

ペルー人主導の団体の話に戻るが、同胞間の交流や互助が主な目的であるため多少排他的な要素もあるが、日本人メンバーがいないと地元行政や他の団体との交流も少なくなり、あまり認知されないうちに姿を消してしまうことも多い。はじめから日本人と一緒にやっているところは地方自治体主催の交流会や国際フェスティバル等にも参加し、次第に存在感を高め頼りにされる。企画・調整能力がある団体、特に民族音楽や踊りのグループは常に重宝される。ただ、イベント参加が興行活動になってくると資金運営等で対立が発生したり、交流がビジネスに転換してしまうケースもあるが、興行収入でメンバー全員が生計を立てることは難しく、通常は兼業しながら各地で公演しているのが現状である3

「Así es mi Tierra」グループ、2010年03、神奈川県大和市の国際フェスティバルでペルー民謡を披露

同胞団体は、これまで北関東や神奈川、三河という東海地方、大阪等に存在しているが、全国の諸団体を代表する連合会的な組織は存在しない。自称連合会というものを何回か試みてきたが、団体間のコンセンサスは得られず、線香花火のようにあっという間に消えてしまったのである。また、つい最近(2010年5月)名古屋を拠点に「在日ペルー商工会議所」という組織が設立されたが、地元のペルー人経営者らが中心になって両国間の今後の経済・通商関係の促進を主な目標にしている。今年中に交渉中にある日本とペルーとの間に「経済連携協定(EPA)」が締結されれば現在の23億ドル相当の貿易(二国間の輸出入総額)が更に増えるというのが根拠になっている4

ペルー人団体のもう一つの特徴は設立の段階から大使館や総領事館の「承認」を求めることである5。団体内で信頼関係があまり成り立っていない段階では領事館の承認によって内部の結束と規律を促すことができ、対外的には同胞と地元社会への有効な広報となる。しかし、こうした在外公館の「承認」には法的根拠はなく、設立総会か創設パーティーに外交官が出席したということに留まるのみである。また、日本政府や自治体に何か嘆願するにしても、必ず大使館員を動員し、出席するよう相当の圧力をかけたりもするが、これには一部のエスニック・メディアも関わり、やむを得ずしぶしぶ参加する領事もいる。

またペルー人の場合、一部の団体やリーダーと称する者が東京と名古屋の総領事の考え方の違いを利用して自分たちの存在価値を高めることもあるが、時には同胞問題とは直接関係のない大使館にも圧力をかけてコミュニティーの行事に大使の出席を促すことさえある6

その時々の大使や総領事の対応の仕方等によってそうした手法が多少プラスになることもあるが、一般のペルー人からすると何のメリットもなく、むしろうんざりする状況でしかない。

対立や違いを武器にして誕生した団体は、どんな立派な目標を掲げていても誰も気づかないうちに消滅していることが多い。同様に、理想は高いが現実的に財源確保ができていない団体も同じ結果に陥っている。なにせ、これはペルー人もブラジル人、他の日系ラティーノも同じであるが、団体の活動に賛同しても一切会費を払わないのが共通の行動である。しかし、形式要件の遵守や対外的な要求は人一倍であるため、幹部らの「政治的消耗」は著しい。

南米に移民した日本人も常に日本の在外公館とのかかわり合いを意識してきたし、時には日系社会の内部闘争を領事館や大使館にまで持ち込んで政治問題化したこともある。どの国でも一度や二度そうした苦い経験はある。しかし、基本的に出身国を代表する大使館、そして同胞問題等も管轄している領事館は公的機関であり、後者に関しては渉外戸籍事務等をメインに単なる複数行政の事務的続きの窓口であり、紛争解決の調停機関または、裁判所ではないのである。

在日ラティーノの同胞団体も、基本的には地域社会との共存と交流、親善と国際理解等の促進が主な目的であると思われるが、やはり団体を設立する前にもっと現実的に運営方法等についても最低限のコンセンサスを構築する必要がある。そして、政治的思惑やロビー活動をするのであれば、日常の交流等とは切り離して個別に対応する方が賢明であり、何でもかんでも大使館や領事館、本国政府を巻き込むことは決して賢い選択とは言えない。

一般のペルー人は穏やかな生活を臨んでおり、日本社会に溶け込み、自分の文化を通じて両国間の架け橋になりたいのだ。

注釈:
1. http://www.npo-homepage.go.jp/ NPO法人の設立や運営についての情報提供

2. 一つの事例として紹介するが、外国人に医療通訳ボランティアを派遣するNPO法人「MICかながわ」という団体があるが、当初は一般会員の会費や神奈川県及び横浜市の助成金等で運営し、実績を積み重ねてきた。現在、国税庁の寄付控除対象団体になっている。とはいえ、アメリカのように大企業や財団から大きな寄付があるわけではない。 http://mickanagawa.web.fc2.com/top_page.html 

3. http://www.asiesmitierraperu.com/
このペルー民謡踊グループ「Asi es mi Tierra」は最も古く、1990年頃に創設しており、ほぼ当初のメンバーが今も活動している。他にもあるが、事例として紹介しておく。

4. 名古屋ペルー総領事メンディビル大使の大きな後押しがあって実現した商工会議所「Cámara de Comercio e Industria Peruana de Japón」である。メンバーは輸出入、飲食業等を営んでいる経営者であり、日本人も数人賛同している。在名古屋ペルー総領事館のサイトにはその旨掲載されており、この商工会議所は日本の経済産業省が認定しているとある。 http://www.consuladodelperuennagoya.com/index 
今後、どのように活動を進め、会員を増やし、ペルーと関係している日本企業をも賛同させていくかが大きな課題である。詳細は、Mercado Latino, Nº 159, Junio 2010, Pág. 8-12,にインタビューが掲載されている。 http://www.mercadolatino.jp/digital   (デジタル版でバックナンバーも見ることが出来る。)

5. これまで、例えば在日コロンビア人も同胞団体を形成してきたが、創設式典には在京領事が出席し、定款等は公正証書にして領事館に保管されている。法人登記ではないが、条文の解釈でトラブルが発生すると領事の下話し合いが行われてきた。しかし、団体の内部闘争になると領事は距離を置き、次第に団体の事業にも参加しなくなる。

6. 2009年の8月頃に浜松や北関東を中心に活動していた複数の団体と個人が日本政府に「浜松宣言」という要望証を提出したが、この要望書には大使の署名がある。
http://www.ipcdigital.com/es/Noticias/Comunidad/Peruanos/Alternativas-para-superar-la-crisis
http://www.ideamatsu.com/migraciones/600-10-4.htm

© 2010 Alberto J. Matsumoto

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About this series

日本在住日系アルゼンチン人のアルベルト松本氏によるコラム。日本に住む日系人の教育問題、労働状況、習慣、日本語問題。アイテンディティなど、様々な議題について分析、議論。