Select a primary language to get the most out of our Journal pages:
English 日本語 Español Português

We have made a lot of improvements to our Journal section pages. Please send your feedback to editor@DiscoverNikkei.org!

日系史における「勇者」 -日系アメリカ人兵士の活躍をふりかえる- その3

>>その2

トラウマを忘れてはならない

アメリカ国内では、従軍を経験した人々が深刻な心身症に悩まされることが良く知られています。特に、昨今のイラクやアフガニスタンでの軍事行動にかかわったアメリカ人の多くが、戦争からくるトラウマに悩まされていることは周知の事実だと思います。このことは、日系人にとってもまったく同じことだと私は思います。従軍を経験した日系人も、戦争を原因とするトラウマに悩まされているのです。

私は、ある日系二世の退役軍人から、今でも戦友を亡くしたことを原因とするトラウマに悩まされているということを聞いたときは、強いショックを隠せずにはいられませんでした。日系人の従軍の歴史においては、その輝かしい戦績ばかりが議論や学習の対象となりますが、その裏には、戦友の死や戦闘の悲惨さなどからくるショックやトラウマに悩まされる日系人の姿があるのです。

この事実があまり知られていない背景の一つとして、アメリカ社会において日系人を含むアジアおよび大洋州系のアメリカ人が、模範的少数派というレッテルを貼られたために、ネガティブな日系人のイメージが「盲点」になってしまったことです。

再評価へ

日系人の従軍の歴史において、たいへん興味深い出来事がクリントン政権時代にありました。それは、日系人の戦績の再評価でした。それまでの日系人に対する戦績の評価が適切であったかどうかが議論された結果、ダニエル・イノウエ上院議員や、先に挙げたタノウエ氏ら21人の日系人が名誉勲章を受章しました(戦死した人々も含めています)。このことは快挙だったのです。実は、それまで従軍を経験した日系人で名誉勲章を受章したのは、サダオ・ムネモリ氏だけだったのです。ムネモリ氏は家族とともにマンザナーに収容されていましたが、陸軍に入隊して第442部隊に所属し、タノウエ氏と同じように欧州戦線で悲劇の最後を遂げました。

U.S. Army veterans from the 141st Infantry Regiment and the 442nd Regimental Combat Team stand during the 65th Anniversary Tribute dinner for the veterans of the Rescue of the Lost Battalion in Houston, Texas, Nov. 1, 2009. (Photo from DefenceImagery.mil - DoD Imagery)

亀裂

最後になりますが、アメリカ軍のイラクでの軍事行為にかんして、ハワイ出身の日系人であり、陸軍の軍人であったアーレン・ワタダ氏がイラクへの派兵を拒否した出来事を紹介します。ワタダ氏は、イラクで行われているさまざまな軍事行為の合法性や正当性に疑問を感じ、熟慮に熟慮を重ねたうえで、派兵を拒否しました。この、いわゆるワタダ論争は、アメリカがかかわった過去の戦争の際に従軍を経験した多くの日系人のあいだに大きな亀裂を生みました。ワタダ氏の判断に一定の理解を示しつつも彼を批判する人々がいれば、「国の恥だ!」と強く主張して徹底的に彼を非難する人々もいました。今日も、アメリカのイラクでの軍事行為の合法性や正当性においては、たくさんの議論が残りますが、ワタダ氏はそれに対する見解を、派兵を拒否するというかたちで示したのだと私は考えます。

高速道路を走っているとき・・・

ロサンゼルス市内を縦断しているフリーウェイの405号線と105号線がまじわるインターチェンジには、このような名前がついています。

サダオ・S・ムネモリ記念インターチェンジ
(第二次世界大戦における名誉勲章受章者)

身近なところに、日系人の従軍の歴史を知ることができるのですが、多くの人々にとって、このことはあまり知られていないようです。私自身は、車を運転していてここを通過するときは、不思議なことに、背筋がぴんと伸びる感じがしました。

おわりに

上村さんに誘われたかたちでJAリビングレガシーに入り、それがきっかけで私は従軍を経験した日系人の皆様に会うようになりました。ロサンゼルスやオレンジ郡を訪問するときには、必ず従軍を経験した日系人の方に会うようにしています。そして、彼らのオーラル・ヒストリーを通して私は日系史にとって従軍の歴史が非常に重要であることを理解しました。従軍を経験した日系人ひとりひとりの努力によって、日系人がアメリカ社会で大きな信用を勝ち取ったことを忘れてはならないと思います。

現代の平和な社会を活きる多くの日本人にとって、日系人の従軍は日系史のなかでも、特に理解しにくいものであると思います。戦争に参加して、多くの血を流したことで日系人は正義を勝ちとったのです。アメリカの大統領であったハリー・トルーマンは日系人部隊の前で、「君たちは敵だけではなく偏見とも戦い、君たちは勝利した」と述べて日系人部隊をたたえています。

それでは、どのようにすれば日本人が日系人の従軍を理解することが出来るのでしょうか。まずは、定期的に開催される日系人の退役軍人のためのリユニオンに参加してみると良いと思います。日本人にとっては、それは非常に敷居の高いイベントである印象はありますが、従軍を経験した日系人の「生」の声に耳をかたむけることによって、実際の歴史を学ぶことが出来るのです。また、従軍を経験した日系人のなかには日本語を話す人々もいますし、自ら自分の体験を語ることをとても好む人々もいます。日系史をさらに理解することの出来る場ですから、ぜひ参加することをすすめます。

Donald Wakida and Shelby Kariya. 60th Nisei VFW Reunion. Photo: Japanese American Living Legacy.

リユニオンなどの退役軍人にかんするイベントの日程などについてはJAリビングレガシーや日系アメリカ人の退役軍人会であるJAVA (Japanese American Veteran Association) に問い合わせると良いです。

JAリビングレガシー (info@jalivinglegacy.org)
JAVA (http://www.javadc.org)

© 2010 Takamichi Go

japanese american soldiers veterans war