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https://www.discovernikkei.org/en/journal/2010/11/15/

ある帰米二世の軌跡: 歯科技工士 ハワード・小川さん -その5

>>その4

父親として、日系社会の一員として

1944年に結婚したハワードさんとアンさんには、1948年に長女のジョイスさん、1952年に次女のスーザンさんが生まれました。ハワードさんは、公の場では多くの歯科医師にとって「素晴らしき父親」でしたが、私生活においても二児の素晴らしき父親でした。ジョイスさんは残念なことに1990年にがんで他界しましたが、スーザンさんは現在も、日本でいうところの特別支援学校の先生をしています。

さらには、ハワードさんは日系社会のために活動をする人でもありました。日系人の相互扶助・友好促進団体である、JAO(Japanese American Optimist Club)の活動に長年かかわってきました。1972年から1973年にかけて、ハワードさんはJAOの会長をつとめました。また、ハワードさんはジョギングを毎日の日課としていました。朝の4時に起きては、自宅周辺を走っていました。

2007年の4月に、わたしはハワードさんとアンさんに会いました。そこではじめて、千代子さんとハワードさんのオーラル・ヒストリーをやりました。今日ここで書いた内容もふくめて、大変貴重なお話をふたりはわたしにしてくれました。

それからまもなく、ハワードさんとアンさんは、永松先生のすすめもあって、千代子さんの住んでいる、スタッフ付きの年長者向けの住宅に移りました。ロサンゼルス市内に住んでいる永松先生にとって、母親である千代子さんと、とても大切な叔父夫婦であるハワードさんとアンさんが身近にいることは、非常に重要なことでした。

しかしながら、同じ年の7月、アンさんが病気のために他界しました。ハワードさんは、その日は、ずっと何かを語りかけるように、アンさんの両手を強く握っていました。妻として、さらには仕事上のパートナーとして大活躍したアンさんの死は、ハワードさんにとって非常に辛い出来事でした。

そして、他界したアンさんを追うようにして、2007年の10月30日にハワードさんはこの世を去りました。享年88歳でした。ハワードさんが他界したことは、姉である千代子さんにとっても、そして永松先生にとっても、非常に悲しい出来事であったことは言うまでもありません。そして、わたし自身にとっても、非常に辛い出来事です。オーラル・ヒストリーをやっていて最も辛いことは、オーラル・ヒストリーをやった相手がこの世を去ることなのです。

ハワードさんの死後、彼を慕う多くの人々からの要請もあって、彼はロサンゼルス市議会と、カリフォルニア州のアーノルド・シュワルツェネッガー知事によって、それまでの功績が称えられ、表彰されました。

おわりに 日系史を“つむぐ”こと

日系史の学習、そして研究にとって大切なことは、オーラル・ヒストリーを欠かさずに実践することと、日系人との交流を大切にすることだと、わたしは考えています。今回は、わたしの行った、ハワードさんと千代子さんとオーラル・ヒストリーをもとにして、この話を書きました。わたしがハワードさんや千代子さんのオーラル・ヒストリーをとおして学んだことは、他者への愛と、人徳の大切さでした。

皆さんが歴史を学ぶときに大切にしてほしいことは、ひとりひとりの人生が歴史をつくることです。それは機械にたとえると、ひとつひとつのかけがえのない部品であると、わたしは考えています。日系史は、オーラル・ヒストリーという部品を集めて、それらを組みあわせることによって、その姿があらわれるのです。

わたし自身も、ハワードさんと千代子さんのオーラル・ヒストリーをとおして、日系史をワンシーンを“つむぐ”ことができたかなと考えています。それは、わたしにとっては、とても光栄なことです。

参考資料

1 ハワードさん、アンさん、永松先生について
永松千代子さんのオーラル・ヒストリー(2007年4月と5月、著者による)
ハワード・小川さんのオーラル・ヒストリー(2007年4月、著者による)
アーネスト・永松先生からの著者に宛てた手紙(2010年の8月)

2 オレンジ郡の日系社会について
オレンジ郡は「海の向こうの日本」―オレンジ郡の過去を振り返る―(著者による)
(URL:http://www.discovernikkei.org/ja/journal/2010/4/7/orange-county/

3 タウル・ビルについて
マーガレット・クロイワさんのインタビュー(ディスカバー・ニッケイから)
(URL:http://www.discovernikkei.org/ja/interviews/profiles/135/

4 その他
JAO(URL:http://www.jaoptimist.org/

アメリカン・プレジデント・ラインズ社
(URL:http://www.apl.com/japan/html/apl_japan.html

福島県立福島高等学校
(URL:http://fukushima.fku.ed.jp/html/

ジョージ・永松さんの写真(オンライン・アーカイブ・オブ・カリフォルニアより)
(URL:http://www.oac.cdlib.org/ark:/13030/ft5q2nb2f0/?layout=metadata&brand=oac4

© 2010 Takamichi Go

California dental technicians Howard Ogawa Little Tokyo Los Angeles United States
About the Author

He studied American social history and Asian-Ocean American society, including the history of Japanese American society, at Orange Coast College, California State University, Fullerton, and Yokohama City University. Currently, while belonging to several academic societies, he continues to conduct his own research on the history of Japanese American society, particularly in order to "connect" Japanese American society with Japanese society. From his unique position as a Japanese person with "connections" to foreign countries, he also sounds the alarm about the inward-looking and even xenophobic trends in current Japanese society, and actively expresses his opinions about multicultural coexistence in Japanese society.

(Updated December 2016)

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