Discover Nikkei

https://www.discovernikkei.org/en/journal/2008/07/20/

難民として米国移住した日本人たち その3: 努力すれば報われる国-西屋国弘さん-

その2(宮内武幸さん)>>

ロサンゼルス空港に近いウェストチェスター在住の西屋さんは、構造設計が専門である。彼もまた難民として渡米してきた一人である。

西屋さんは鹿児島県串木野市の出身。小学校を出るとすぐに日本通運の事務所に就職した。「同じ事務所で、旧制中学を出た人と同じ仕事をしていても、学歴から来る差別がある。それが嫌だった」。そんな時、農業研修生としてアメリカを見てきた内田善一郎さんから「アメリカは素晴らしい国だ」という話を聞かされた。どんどん夢が膨らんだ。自分もアメリカに行けば将来を変えることができると思えた。

申請する少し前に鹿児島にデラ台風が上陸した。その災害が適用されて難民救済法で渡米できることになった。1956年のことだった。西屋さんは早くに父親を亡くし、母一人子一人だったが、母は「お前の将来にかかわることだから好きなようにしなさい」と背中を押してくれた。

西屋さんが向かったのはメルスビューという名のキャンプだった。サンフランシスコ空港からの道すがら、巨大なフォークリフトが幾台も捨ててある光景は衝撃だった。「日本は凄い国に戦争を仕掛けておったんだなあと思った」

さらにショックだったのはメルスビューで目にしたバラック小屋だった。「日本では華やかに送り出されたのに、辿り着いた場所がバラック…」。しかも 西屋さんは農業の経験がなかった。それでも時給90セントは当時の日本から来た者にしてみれば高給だった。周囲には何もないので、お金を使うこともない。給料のほとんどを日本へ送金した。

農場で働く約束は3年だったが、2年経った頃、西屋さんは串木野の後輩とサンフランシスコへと向かった。そのまま戻らなかった。

「日本にいる時から英語を独学で勉強していたのに、農園の中は日本人だけ。全然英語を使う機会も学ぶ機会もない。これではいかんと思った」

やがてロサンゼルスに行けばガーデナーとして稼げるという情報を得て、西屋さんは南カリフォルニアへとやって来た。白人の家に住み込んでロサンゼルスシティー・コミュニティーカレッジに通い、建築を学んだ。日本から妻を迎えた後、アリゾナの大学に入学。ガーデナーの仕事を現地で続けた。卒業後、ロサ ンゼルスの設計事務所に就職し、1999年に独立した。

最後に「アメリカは何をくれたか」という問いを投げ掛けた。西屋さんの答えは「アメリカという国は、自分でやったことがすべて自分に返ってくる。やればやっただけ報われる国。ここで教育を受けたことで、今の私がある」というものだった。

日本では小学校を出ただけの青年が、海を渡り、農業で苦労した末に、大学を卒業し専門職に就いた。努力をすればアメリカの扉は開かれるのだということを、自ら実証した人生だと言えるだろう。

その4 (小屋喜生さん)>>

© 2008 Keiko Fukuda

About the Author

Keiko Fukuda was born in Oita, Japan. After graduating from International Christian University, she worked for a publishing company. Fukuda moved to the United States in 1992 where she became the chief editor of a Japanese community magazine. In 2003, Fukuda started working as a freelance writer. She currently writes articles for both Japanese and U.S. magazines with a focus on interviews. Fukuda is the co-author of Nihon ni umarete (“Born in Japan”) published by Hankyu Communications. Website: https://angeleno.net 

Updated July 2020

Explore more stories! Learn more about Nikkei around the world by searching our vast archive. Explore the Journal
We’re looking for stories like yours! Submit your article, essay, fiction, or poetry to be included in our archive of global Nikkei stories. Learn More
New Site Design See exciting new changes to Discover Nikkei. Find out what’s new and what’s coming soon! Learn More